歯ぎしり・食いしばり(噛みしめ癖)
歯ぎしり・食いしばり(噛みしめ癖)が気になる方へ
歯ぎしり・食いしばり(噛みしめ癖)は、習慣化するとお口の周囲や歯の摩耗、根の破折などさまざまな悪影響を及ぼすことがあります。しかも、自覚せず行っているケースが多いため注意が必要です。
歯ぎしりとは
歯ぎしりとは、上下の歯をギリギリとこすり合わせる行為を指します。大きなストレスがかかった時や睡眠時などに生じるため、この症状に自覚がない人が多く、無意識に行っている人がほとんどです。
食いしばり(噛みしめ癖)とは
食いしばり(噛みしめ癖)は、就寝中や物ごとに集中している際に無意識に歯を食いしばる癖のことです。歯ぎしりと違って、食いしばるときに音が鳴らないので他人から気づかれにくく、自分自身でも知らないうちに歯を食いしばっているので自覚することが少ないです。食いしばりは、歯の欠損やむし歯、顎の痛みなどの症状を引き起こすことがあり、放っておくと体に大きな負担を与えるので注意が必要です。
歯ぎしり・食いしばり(噛みしめ癖)の治療方法
①マウスピースによる治療
現在のところ、無意識下での歯ぎしりを止める手段はありません。そのため歯を守るためにマウスピースを用います。就寝時に装着して、睡眠中の歯ぎしりによる歯やあごにかかる力を分散します。
マウスピースは、身体への負荷を軽減させるとともに筋肉の緊張を和らげます。具体的には、肩こりや頭痛、腰痛、目の疲れなどを予防し、顎関節症のリスクが減るといわれています。
②薬で筋肉の緊張をほぐす
当院では、TCH(噛み合わせ癖)改善の指導をしていますが、指導だけでは改善が見られないこともあります。そのような場合、咬筋ボツリヌス治療をお勧めしています。
咬筋が肥大することで、顎の痛み、結構不良、ストレス、頭痛、肩こり、エラ張り、むくみ、まれに唾液減少などを引き起こします。
咬筋ボツリヌス治療は、ボツリヌス菌が作り出す天然のタンパク質を有効成分とする薬を筋肉に注射することで、筋肉を緊張させている神経の働きを抑える治療法です。歯ぎしり、食いしばり、顎関節症などに関係する咬筋肥大を改善します。
咬筋ボツリヌス治療は、「ボツリヌス毒素(ボツリヌストキシン)」を使用しますが、あくまでタンパク質であって、菌そのものを使用するわけではありません。可逆的で、安全性が高い有効な治療法です。
咬筋ボツリヌス治療で、以下の改善が期待できます。
- 顎関節症の緩和(顎が鳴る、口が大きく開かない、顎が痛む)
- 就寝中の歯ぎしりの緩和
- 歯ぎしりによる歯の磨滅(擦り減り)抑制
- 咬合圧による詰め物や被せ物の脱離、破損抑制
- 食いしばりの緩和
- 食いしばりで起こる肩こり、頭痛などの改善
- 歯の知覚過敏の改善
また、咬筋ではないですが、
- ガミースマイルの改善
- オトガイ部(あご先)の梅干しシワの改善
などにも応用できます。
噛みしめ癖や、噛み合わせの力が強く、歯が割れてしまう方を多く見てきました。マウスピースは歯ぎしりに一定の効果がありますが、噛みしめの治療には限界があり、まさに歯痒い思いをしてきました。一定期間の効果ではありますが、それを打開する手段として当院でもボツリヌス治療を取り入れた次第です。
保険外診療(自由診療)ですが、上記のような症状で悩んでいる方や、どんどん歯が割れてしまうという方は一度ご相談ください。
ホルター筋電計付き刺激装置マイオニクスを導入しています
当院ではホルター筋電計付き刺激装置マイオニクスを導入しています。筋電計は、咬合を測定記録する装置です。咬合を測定し記録することで、より確実な診断と噛み合わせ治療が可能になります。ご興味がある方はお気軽にご相談ください。
自分の歯を生涯もたせるために
『むし歯』と『歯周病』は、歯科における2大疾患です。本来、我々の体は生涯を終えたあと、その体は土壌の細菌に分解されます。しかし『むし歯』や『歯周病』にかかるということは、まだ生きているのに歯や歯周組織が悪玉細菌(むし歯菌や歯周病菌))に分解されている状態を指します。それでは、どうしたらこのような事態を防げるのでしょう?
口腔内のむし歯菌や歯周病菌などの悪玉細菌のコントロールをすることと、その菌の棲家となる歯のひび割れを生じさせないことに尽きます。
人間の体には免疫機構がありますので、人によりますがある程度の年齢(45歳くらい)までは免疫機構で悪玉細菌の活動を抑えています。平安時代にも人間50年と謳われていますから、本来人間の体の耐用年数はやはり50年くらいだと思います。
しかし、今や寿命70歳は当たり前になってきました。50年の耐用年数を超えたら今まで通り自然のままとはいきません。より食生活や生活習慣に留意しなければたちまち病気になってしまいます。今まで以上に悪玉菌のコントロールが大切になってきます。これが家庭での日々のホームケアや定期的な歯科検診と歯石除去が必要な理由でもあります。
歯科での歯石除去はいわば定期的な大掃除のようなもので、日々の汚れの取り残しのリセットをするので大事ですが、もっと大事なのは日々のホームケアです。これには悪玉菌のバイオフィルムを破壊し、殺菌力に非常に優れている『POICウオーター』と、歯の表面の修復力や歯ぐきの修復力に優れた『オーラループ』を組み合わせたホームケアが日々の悪玉菌のコントロールに最適だと思います。
一方、歯のひび割れを生じさせるのは、主に噛みしめ癖と歯ぎしり癖です。実際、当院にいらっしゃる患者さんのうち8割以上に何らかの噛みしめ、歯ぎしりをしている方特有の所見が見受けられます。
歯のひびはもちろん、歯の根元が欠けている、先端が異常にすり減っている、下顎舌側骨隆起(歯ぐきや顎の骨にみられる白いこぶのようなもの)がある、上顎口蓋隆起がある、口を開けると口輪筋に常に力が入って『え~』の発音の開け方をする(本来は『お~』の発音の開け方が好ましい)などです。しょっちゅうむし歯になる、詰め物・被せ物が多い、白い人工物のすり減りや破損が多い、詰め物や被せ物がよく外れる方も要注意です。
また、重症になると肩こり、偏頭痛、寝ても疲れがとれないなどの症状を併せ持った方は少なくありません。以上の所見が当てはまる人は、ほぼ噛みしめ癖、歯ぎしり癖があると思って間違いないでしょう。
噛みしめ癖、歯ぎしり癖は、毎日少しづつ歯にひび割れを生じさせて、そのひび割れに侵入したむし歯菌からむし歯になり、治療してもまたひびが入るので、再治療を繰り返してやがて歯の神経を抜くことになり、歯は神経を失うことで柔軟性を失うので余計にひびが入りやすくなる悪循環に入ります。
最後には歯が真っ二つに破折し歯を抜くことにつながります。こうなる前に噛みしめ癖の是正、特に『咬筋ボツリヌス療法』などで適正な噛みしめの力のコントロールをする必要があります。歯を失っても、ブリッジや入れ歯、インプラントなどで補う方法がありますが、やはり自分の歯で一生過ごせることが一番体にとって良いと思います。
10年後、20年後を見越して、自分の歯を温存するための予防策、未病治療として、唯一有効な『抗菌ボツリヌス療法』で歯を失うことを未然に防ぐ治療を強くお勧めします。